プロ音質になるアナログレコードのクリーニングとは? 02に引き続きいよいよ洗浄です!私は以前、食用油を製造する会社の品質管理にいたこともあり、専門知識と経験からどのようにすれば汚れを落とせるかを考えてやってみた結果がこの方法です。まだ改善の余地はありますが、参考にしていただければと思います。
洗浄のときは、100均でキッチンタオル立てとトレイを買っておくとLPサイズのレコードスタンドになってとても便利です。
傷がひどいものはどうしようもないですが、きれいなものはびっくりするほど良い音を奏でるようになるのでいつも楽しんでクリーニングしています。
流水で湿らせます
まずは、35度くらいの温水をレコード盤へ満遍なくかけ流します。これは、取れやすい砂塵を温水で流してしまうことと、溝の奥まで湿らせておいて、次の工程で泡が溝の奥に新党と安くすることを狙っています。
空気中には硬度9の石英粒子が舞っていますので、強くこすると溝にダメージを与えてしまうため、大き目の砂塵やホコリを落とすには流水で洗い流す方法が最適です。
泡でやさしく
スポンジを水でぬらし、何度もスポンジを握りつぶして内部の水を出してスポンジ表面の見えないゴミを洗い流してからJOYで泡立てます。
泡をつける前にレコードを温水の流水で流し、レコード表面には触らないように上からスポンジを絞って泡をかけて満遍なく伸ばします。
次に、レコード表面には触らないようにして泡だけでレコードをさするようにして温水の流水で流します。これを表裏2回ずつ行います。
この工程の狙いは、最初の温水の流水だけでは落とせなかった砂塵に洗剤をつけてなるべく溝にダメージを与えないよう洗い流すことと、溝の奥まで洗剤を浸透させることです。
ブラシでもやさしく
前の工程でつけたようにレコード表面に泡を伸ばします。デンターシステマで作成したブラシを使って、やさしく、毛先がレコードにちょっと触れ感じでゆっくりと往復3回ずつ、表裏別々に行います。
この工程では、まだ取れない砂塵を取り除くことと、レコード製造のときについたスタンパーとの剥離材に洗剤を浸透させることを狙っています。
レコードは、プラスチックの塊にスタンパーと呼ばれる原版の型を押し付けて製造しますが、はがれやすいようにWAXのような剥離材がついたまま出荷されていますので、それもクリーニングできれば元々の音を楽しむことができるようになります。
ブラシでもう少し回数を増やして
今度は回数を増やして前の工程と同じように泡をのばしてブラシでやさしく5回ずつ、表裏別々に行い、温水の流水で流します。この工程を2回繰り返します。
ここまでくると、溝に重大なダメージを与えるような大きな砂塵はほぼ残っていない(残っているものは溝に刺さったり食い込んだりしています)ので、小さな砂塵と劣化した剥離材をクリーニングすることを狙っています。
いよいよ自作クリーナーの登場です。
流水で流した後、自作クリーナーをレコード全体にかけてデンターシステマで作成したブラシを使って、やさしく、毛先がレコードにちょっと触れ感じでゆっくりと往復10回ずつ、表裏別々に行い、温水の流水で流します。この工程を2回繰り返します。
この工程では、油溶性の溶剤としてエタノールが含まれていますので、剥離材と油に溶ける性質の汚れを落とすことを狙っています。が、ピッチやタールのような汚れはまだ取れません。
泡タイプ セスキの激落ちくんの登場!
このタイミングで泡タイプ セスキの激落ちくんを使用すると、なぜかJOYや石鹸由来のヤニとりクリーナーで取れない汚れも取れるようになります。
石鹸由来のヤニとりクリーナーを使用します
石鹸由来のヤニとりクリーナーは泡なので、レコード表面に満遍なくかけて、ブラシでやさしく10回ずつ、表裏別々に行い、温水の流水で流します。この工程を2回繰り返します。
この工程ではピッチやタールのような汚れを落とすことを狙っています。今まで100枚以上洗浄しましたが、この工程でしか落とせないノイズがあるのが分かりましたので今では必ず行うようにしています。
JOYに戻ります
2番目の工程で使ったJOYを泡立て、再び泡をのばしてブラシでやさしく5回ずつ、表裏別々に行い、温水の流水で流します。この工程を2回繰り返します。
この工程では、石鹸由来のヤニとりクリーナーと残留した汚れ全般を落とすことを狙っています。JOYは強力な洗浄力と、水で流した後の残留物が最も少ないので仕上げにはもってこいです。
再び自作クリーナーの登場です
自作クリーナーは高級なバキュームクリーナー専用のクリーナーと組成がほぼ同じになるように調合してあり、表面活性剤のフジフィルム ドライウェルを微量に含ませてあるので、ノイズが出るほどの静電気は帯電しにくく、バチッバチッという静電気独特のノイズ発生を抑えてくれます。
また、この工程を省略すると、低音が弱くなる傾向があります。
この工程では、乾燥後の静電気を押さえて音質を整えることを狙いとしています。
仕上げは水だより
最終の仕上げとなる乾燥は、ノンオイル型のコンプレッサーで圧縮した空気を使用して0.8MPaくらいの圧力で水分子もろともミクロン単位のゴミを吹き飛ばします。
水分子は、酸素原子側と水素原子側で+と-の極性がある極性分子なので、分子同士も磁石のようにひきつけあって水素結合と呼ばれる形態でつながっています。
これが、水分子が何かの表面につくと無重力状態では表面に伸びる性質の正体ですが、逆にミクロン単位のゴミは水分子にひきつけられますので、フィルターを通した圧縮空気で質量の大きな水分子ごと吹き飛ばすことが可能になります。
このとき、スプレー缶のエアーなどを使用すると、スプレー缶から出る揮発性の成分がレコード表面についてしまうほか、スプレー缶のエアーは圧力が0.2MPa程度になっていて非常に弱いので、溝の奥の水分が飛ばしきれず、逆に周りの空気をまきこんで空気中のゴミを付着させてしまい、水分が乾いた後に汚れが固着してしまうことがありますので要注意です。
注意
ここまでレコードのクリーニングについてレポートしてきましたが、洗浄をするのでしたら始めは傷つけてしまっても良いレコードで十分練習してから本番に臨むことをお勧めします。くれぐれも自己責任でお願いします。傷が多いレコードはどうしてもノイズがひどいものもありました。
>>>プロ音質になるアナログレコードのクリーニングとは? 01 を読んでみる
>>>プロ音質になるアナログレコードのクリーニングとは? 02 を読んでみる